デーヴァナーガリー文字ありがたや

ヒンディー語のわかる者としては、マラーティー語圏にあっても、看板を見て何の店だかわかったり、書かれている内容が把握できるのは助かる。南インドだと3倍の大きさの字で書いてあってもわからない。

同様にメニューなどを見て現地での呼び方などもわかる。またマラーティー語新聞を手にしてみて、何が書かれているのかある程度想像がつくのもありがたい。背景にある語彙に共通性が高いため、文字が共通するだけで非常に便利な部分が多い。これはネパールを訪れても同様だ。

一目で地酒屋とわかるのがありがたい。
マラーティーでは「チャーエ」は「チャー」なのか。(chahaaと綴る)

 

セレブな気分

シルディのサイババがなぜかコワモテ風

夕飯で入ったレストラン。ボロいし裏手にある小さな食堂に見えるのだが、広い裏庭があり、そこにはたくさんの席がある。

店内風景
裏庭にはさらに沢山の席がある。

店先の席にはジャンジーラー島で見かけたようなスクールトリップの男の子たちがいて、ただでさえ騒々しいのに、次から次へとやってきては同じような質問を繰り返したり、一緒に写真撮ってとくるのが面倒くさい。「ああ、もう嫌だ」と裏庭の席に行くと、そこは女子席になっていてずいぶん静かだった。

とても美味なフィッシュターリー

あぁ良かったと食事を注文して待っていると、男の子たちに較べると遠慮があるぶん可愛げがあるのだが、やはり入れ代わり立ち代わりやってきては「どこから来ましたか?」「インドは好きですか?」などとお決まりの質問を繰り返したり、一緒にセルフィー撮ってくれというのは変わらない。

それでも男の子たちとは頻度がまったく違う。それにしばらくこちらの様子を窺いながら、思い立ったようにしてやってくるのが女の子たちだ。男の子たちは、こちらに気がついた瞬間にスマホを手にして「セルフィー取らせてや!」とずんずん飛び込んでくるのだ。

いずれにしても、このあたりの「どんどん前に出てくる」感じは日本の子供たちには見習って欲しい。インドの子供たちは、「どこから来ましたか」「インド好きですか?」「インドのどこがいいですか?」「僕らは✕✕から来ました。✕✕を知ってますか?」「インドの食べ物は好きですか?」「スズキ、トヨタ、ソニー!」「カラテ、ジャッキーチェン!」などと質問や質問にもならないようなことをブチまけながら、僕も私も、あいつもこいつもと、次々にセルフィーを取りに来て、あまりに過ぎると引率の先生が「コラぁ〜!」と遮りに来るほどなのだが。

日本に来た外国人旅行者が日本の修学旅行の学生・生徒たちに囲まれて閉口したなんて話は聞いたこともないし、たぶんそんなことも起きないだろう。

それはそうと、日本でもセレブであったら常日頃からどこに行ってもこんな状態なのだろう。こんなのはとても面倒くさいため、やはり私はセレブにならなくて実に良かったと思う。

食事後、宿の部屋のバルコニーからの眺めを楽しむ。

難攻不落、最強の城塞島

スクールトリップや休暇のの時期に来ると大混雑で大変!

ある意味、インド随一の名城、亜大陸最強の城塞、ジャンジーラー島。ここ十数年ほど「ムンバイに行ったらついでに訪問」と思いつつも、伸び伸びになっていたのだが、ついに訪問できた昨日以来興奮が収まらない。

何がインド有数の名城であるかといえば、その難攻不落ぶりである。1100年の築城以来、インド独立に至るまで 847年間もただの一度も陥落することなく幾多の攻撃を跳ね返してきた「必勝不敗の城」なのだ。たぶんこういう例は世界的にも稀だろう。

攻略してきた相手も在地勢力の豪族に毛の生えたようなのばかりではなく、強大なマラーター王国、この地域で力を伸ばして現在のゴア、ボンベイ周辺(カタリナ王女の英国王室輿入れ時に英国に譲渡)、ダマン&ディーウを領有したポルトガル、史上初めてインドを統一した英国をもってしてもジャンジーラーだけは落とせなかったのだ。

スィッディーの王国の領土が大きく簒奪されて対岸にも外敵の力が及ぶようになっても、このフル武装した島は屈することはなかった。

おそらくカギは包囲網をかいくぐって、他勢力との外交関係で武器弾薬類の補給を得たりする外交力もあったはずだが、決して大きくない島にふたつの大きな淡水池があったこともあるのだろう。まさにこれぞジャンジーラーの名前の由来、ジャル・ジャズィーラー(水の島)たるゆえんだ。

決して大きな島ではないが水には恵まれている

飲水はいうまでもなく、野菜や家禽類などの食肉も自給できていたはず。

こういう「必勝不敗伝説」の島は、日本だったら神社が出来て、受験生用たちが大挙してお参りに来ることになりそうだ。

古語はきっちり、外国語からの借用語はてんでバラバラ

「ティキート・ガル(チケット売り場」とある

デーヴァナーガリー文字圏(ヒンディーベルトに加えて、マハーラーシュトラ、ネパール)で興味深いと思うのは、サンスクリット語等古語からの借用語については古語の綴りをきっちり踏襲するのに、外国語からの借用語については大きな揺れがあることだ。

ヒンディーでटिकट (ティカット)がマラーティーではतिकीट(ティキート)となり、最初のTは反転音ですらない。

おそらくグジャラーティーやベンガーリーでも同様に「古語はきっちり正確、外来語はバラてんでバラバラ」という具合ではなかろうかという推測もできる。